谷川俊太郎「静かな雨の夜に」

いつまでもこうして坐って居たい
新しい驚きと悲しみが静かに沈んでゆくのを聞きながら
神を信じないで神のにおいに甘えながら
はるかな国の街路樹の葉を拾ったりしながら
過去と未来の幻燈を浴びながら
青い海の上の柔かなソファを信じながら
そして なによりも
限りなく自分を愛しながら
いつまでもこうしてひっそり坐って居たい