金井美恵子『遊興一匹 迷い猫あずかってます』

 猫を見ていると、「遊興一匹」だなあ、とつくづく思うのである。『沓掛時次郎・遊俠一匹』という加藤泰監督の映画があったけれど、いうまでもなく猫には、俠というものはないし、毎日見ていると、眠る(これにいちばん時間をさくようだ)、食べる、排泄する、遊びまわる(眠ることのつぎにこれに時間をかける)、という四つのことしかやらないし、犬のように主従関係を飼い主や仲間と結ばず、「一匹」であることに生きているからだ。