村上春樹『辺境・近境』

 同じことが何度も何度も単調に繰り返され、時間だけがゆっくりと流れていく。でも協会の庭に腰をおろして、子供たちと一緒にそういう光景をじっと見ていても、僕としてはべつに退屈もしないし飽きもしなかった。というか、そのうちにある種の懐かしささえ感じてくることになった。そういえば昔は日本でも、お祭りといえばこんな感じののんびりしたものだった。お祭りというのは、ぱっと盛り上がってぱっと終わるというものではなくて、朝から延々と続く長い過程を楽しむものであった。我々はある場合には、見事な祭典よりはむしろ、いつ果てるともなく引き延ばされたアンチ・クライマックスのほうを好んだ。