ヴァルター・ベンヤミン「複製技術の時代における芸術作品」(高木久雄・高原宏平 訳)

ところが映画館のなかでは、観客の批判的態度と享受的態度とは、完全にひとつに融けあっている。このばあい、個人個人の反応の総和が観客全体の反応を形成するわけであるが、映画館以上に、個人の反応が、その結果であるはずの集団の反応によって、あらかじめつよく制約されているところはない。映画館内における観客の反応の表明は、そのまま観客のセルフ・コントロールでもあるのだ。