上野千鶴子『女という快楽』

男にとって、性を享受し生殖に責任を負わずにすむ社会は、一つの「男のユートピア」に違いないが、そういう社会は、同時に男性を生殖から排除してもいる。「女の腹は借りもの」が女の疎外なら、「男のタネは借りもの」もまた、男の疎外にほかならない。しかし久しい間、男による疎外を受けてきた女たちが、男を生殖から排除することによって、男を逆差別しているのだとしたら、これは悪意に満ちた報復だと考えるほかはない。