上野千鶴子『女という快楽』

 しかしこのゲームは、もともと対等なゲームなのだろうか。ことばを占有してきた男たちは、女たちを名づけ、記述し、そのことによって女を客体化してきた。沈黙のうちにある女たちは、自分をとり戻すすべがない。女たちは「わたしって誰」であるかを、心理的にも社会的にも男に依存する。女は男から「あなた」と呼びかけられることで、男から求められる存在であることを知る。女は男に対して同じように「あなた」と呼ばいかえすことができない。女の「わたし」は予め奪われている。女の「わたし」は「あなたからあなたと呼ばれるわたし」だ。「第二の性」は「第二人称の性」でもある。