ジャン・ジョゼフ・グー(土田知則 訳)『言語の金使い――文学と経済学におけるリアリズムの解体』

 ヨーロッパにおいて、小説や絵画におけるリアリズムの危機が金貨幣の終焉と時期を同じくするのは単なる偶然であろうか。また、「抽象」化した芸術の誕生が、不換的な貨幣記号という、今や遍くいきわたっているスキャンダラスな発案物と同時代に属するのは偶然なのであろうか。そこには、貨幣および言語にとっての保証となり指示物となるものの瓦解現象、すなわち、表象作用を突き崩し、シニフィアンの漂流時代を始動させるような記号と物との断絶がみられないであろうか。