斎藤環『OK? ひきこもりOK!』

 私たちはみな、善意から過ちをおかす可能性を持っています。一面的な善意、正しさ、有効性といったものが、いかに視野狭窄をもたらすか。臨床場面でもよく経験することですが、治療者自身が「これが絶対に正しい」と考えはじめたら、むしろ要注意信号です。それは、もっとも危険な医療過誤の徴候であるかもしれないからです。こうした「絶対正義の暴力性」に対する懐疑は、臨床家に限らず重要な視点ではないでしょうか。