パヴェーゼ『月とかがり火』(米川良夫 訳)

 わたしはよく、このわたしたち二人のあいだからどんな子供が生まれるのだろうか、と考えた――彼女のあの艶(つやや)かで硬い腰、牛乳とオレンジ・ジュースをたっぷり吸いこんだあのブロンドの下腹と、このわたし、濃いわたしの血とのあいだから。二人とも、どことも知れないところからやって来た。しかも、わたしたちが何ものであるか、わたしたちの血のなかに、ほんとうのところ、何がひそんでいるのかを知る唯一の方法といえば、この子供なのだった。そいつは愉快だろうな、とわたしは考えたものだった――わたしの息子がわたしの父か祖父に似ていたなら。そうすれば、わたしはついにこの目で、自分が何ものであるか確かめることができるだろう。