パヴェーゼ『月とかがり火』(米川良夫 訳)

 あのころのすばらしい点は、いっさいが季節によって行われ、その季節の一つ一つに、仕事や収穫の種類に応じた、あるいは雨か天気にしたがった習慣や遊びがあることだった。冬には、泥がついて重くなった木沓をはき、手をかじかませ、鋤を押して痛む背をのばしながら台所に帰って来る。しかしやがて、休閑地をおこしてしまえばもうおしまいで、雪がふり出すのだった。焼栗をたべ、夜ふかしをし、家畜小屋を見まわって、何時間も過すのだった。いつも日曜日みたいな感じだった。今でも冬の最後の仕事、そして一月末の酷寒の数日が過ぎるとすぐの仕事を憶えている――落ち葉やもろこしの皮を黒く濡れた堆肥(つみごえ)――それに火をつけておくと、畠のなかで煙り続けて、夜や明け方の匂いをはやくも漂わせて、あるいはまた翌日の天気を約束するのだった。