宮本輝「泥の河」

 堂島川土佐堀川がひとつになり、安治川(あじかわ)と名を変えて大阪湾の一角に注ぎ込んでいく。その川と川がまじわる所に三つの橋が架かっていた。昭和橋と端建蔵橋(はたてくらばし)、それに船津橋である。/藁や板きれや腐った果実をうかべてゆるやかに流れるこの黄土色の川を見おろしながら、古びた市電がのろのろと渡っていった。