吉岡実「薬玉」

菊の花薫る垣の内では
祝宴がはじめられているようだ
祖父が鶏の首を断ち
         三尺さがって
              祖母がねずみを水漬けにする
父はといえば先祖の霊をかかえ
              草むす河原へ
声高に問え 母はみずからの意志で
                何をかかえているのか
みんなは盗み見るんだ
          たしかに母は陽を浴びつつ
          大睾丸を召しかかえている