斎藤美奈子「「それってどうなの主義」宣言」

「それってどうなの主義」宣言


「それってどうなの主義」とは、何か変だなあと思ったときに、とりあえず、「それってどうなの」とつぶやいてみる。ただそれだけの主義です。
 つぶやいたところで急に状況が変わるわけでも、事態が改善されるわけでもありません。それでもこの「つぶやき」には、ささやかな効用があります。


 一、「それってどうなの」は違和感の表明である。
 世間に流通している常識、言葉、流行、情報、報道などに違和感を感じたときには「それってどうなの」と口に出して言ってみる。その違和感は、たとえ小さくても、長く心に保存・蓄積され、世の中を冷静に見る癖をつけてくれるでしょう。


 一、「それってどうなの」は頭を冷やす氷嚢である。
 人生の中で重要な決定を下すとき、大きな波に呑まれそうになったときには「これってどうなの」と自問する。それは頭の熱を下げ、自分を取り戻す時間を与えてくれるでしょう。


 一、「それってどうなの」は暴走を止めるブレーキである。
 だれかが不当な扱いを受けていると感じたとき、周囲でよからぬことが進行していると感じたときには「それってどうなの」と水を差す。相手がふと立ち止まるキッカケになるかもしれません。


 一、「それってどうなの」は引き返す勇気である。
 会議の席で寄り合いの場で、あれよあれよと物事が決まっていくことに抵抗を感じたら、手をあげて「それってどうなんでしょうか」と発言する。意外な賛同者が現れ、流れが変わるかもしれません。


「それってどうなの主義」とはすなわち、違和感を違和感のまま呑み込まず、外に向かって内に向かって表明する主義。言い出しにくい雰囲気に風穴を開け、小さな変革を期待する主義のことなのです。「それってどうなの」に大声は似合いません。小さな声でぼそぼそと、が効果的。ではみなさん、小さな声で唱和してみましょう。それってどうなの?


                     それってどうなの主義者連盟(略称「そ連」)