セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

 すごく遅れて、とうとう姪が帰って来た。やれやれ、なんて腰だ! 彼女の尻ときたら本物のスキャンダルだ……スカートにいっぱい襞がある…… だからよけいはっきりそれが目立つ。割れ目のあるアコーデオンだ。なにもかもくっきり見える。失業者ってやつはやけくそで、セックスに飢えていて、女を誘う金がない…… だからわいわい言う。「よお、いい尻だな!」と、連中はミレイユに言葉をかける…… 面と向かって。廊下の端で、いつもむなしく勃起して。他の連中より顔がいい若者は分け前にあずかれるようにできていて、人生を甘く考えている。彼女が必死になるようになったのは、もっとずっと後のことだ!……さんざん不幸な目に会ったあとで…… 目下のところは彼女は楽しんでいた……