2014-06-09から1日間の記事一覧

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

すごく遅れて、とうとう姪が帰って来た。やれやれ、なんて腰だ! 彼女の尻ときたら本物のスキャンダルだ……スカートにいっぱい襞がある…… だからよけいはっきりそれが目立つ。割れ目のあるアコーデオンだ。なにもかもくっきり見える。失業者ってやつはやけく…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

もう病人はうんざりだ…… 午後以来、三十人もうるさい連中を診てやっている…… もうできない…… 勝手に咳をしろ! 唾を吐け! 骨が抜けろ! おたがいにオカマでも掘れ! 尻に三万種類のガスがつまって飛んでいけ! 糞食らえだ!……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

手紙の中の悲しいことは、もう二十年近く、みんな彼女のところで停っていた。それがごく最近の死の臭(にお)い、途方もなく酸っぱい味にまじってまだそこにある…… 悲しみが孵化したのだ…… そこにある…… さまよっている…… そいつはわれわれを知り、われわれは…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしは嵐がもっともっと荒れまくり、家々の屋根が崩れ、春がもう帰ってこず、この家が消え失せればいいと思う。 ベランジュ婆さんは知っていた、悲しいことはみんな手紙でやって来るのを。わたしはもう誰に手紙を書いていいかわからない。連中はみんな遠く…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

こうしてわれわれはまたも孤独だ。すべてはこんなにも遅く、重く、もの悲しい…… もうじきわたしは年をとるだろう。そしてついにはこれも終りになるだろう。わたしの部屋にはおおぜいの連中がやって来た。やつらはいろいろなことを言った。たいしたことじゃな…