ニーチェ『偶像の黄昏』

 結局のところ、誰であれ自分が持っている以上のものは支出できない――このことは個人にも当てはまるし、民族にも当てはまる。権力のために、大きな政治のために、経済、世界交易、議会制度、軍事的利害などのために、自分の力を支出してしまうなら、――つまり、この方面に向けてありったけの量の知力、真面目さ、意志、自己克服を出し尽くしてしまうなら、別の方面では欠落が生じる。文化と国家とは――この点について勘違いしないでもらいたいのだが――たがいに敵なのである。

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