ニーチェ「遺された断想」

 私が戦っている相手は、経済上のオプティミズムである。このオプティミズムは、あたかも万人の出費が増大するにつれて万人の利益も必然的に増大するにちがいないかのように言う。私には実情はその正反対であるように思われる。すなわち、万人の出費はつもりつもって総体的損失になるということ。人間はますます小さくなりつつあるということ。――その結果、この巨大な過程がいったい何のために役立ってきたのか、もう誰にもわからないということ。一つの何のために? 一つの新しい「何のために?」――これこそが人類の必要としているものなのである。

   ※太字は出典では傍点