オスカー・ワイルド『真面目が肝心』(鳴海四郎 訳)

「お年は?」
「二十九です」
「まさに適齢期。ところで、かりにも結婚しようという男性は万事を知りつくしているか、あるいは何一つ知らないか、どちらかであらねばならないというのが私の持論ですが、あなたはどちら?」
「ぼく、なんにも知らない方です」
「安心しました。生れながらの無知によけいな手を加えるようなことには賛成できません。無知というのは輸入ものの高級果物とおなじこと、手をふれればいたんでしまう」