ウィリアム・クーパー『田舎暮らしの情景』

 「ねえダーリン、窓から離れた方がいいと思わない?」
 「どうして?」
 「あなた、何も着ていないじゃない」
 「その方がいいじゃないか……」。彼女のデリカシーを尊重して、私は窓をばたんと乱暴に閉めて自分の言葉の続きをかき消した。
 彼女は笑顔でこっちを見ていた。私は彼女の方に歩いていって、そのかたわらに立った。片肘をついて、黒髪が滑らかな裸の肩に流れている姿は魅力的だった。私は彼女の頭のてっぺんを見下ろした。
 突然、彼女が吹いた。
 「素敵なアルバート」と彼女は言った。
 言っておくが私の名前はアルバートではない。ジョーである。ジョー・ラン。
 マートルは意味深長な、問いかけるような目を上げて私を見た。
 私はニヤッと笑って応えたと思う。
 しばらくして、彼女は一息ついた。
 「男ってほんとにいいわよね」と彼女は深みある考えこむような声で言った。私は何も言わなかった。いまは哲学的思索の時だとは思えなかった。向かいの壁をただぽかんと見ていた。
 そのうちようやく、彼女はやめた。
 「どう?」。見下ろすと、ショックの表情を浮かべた彼女が次第に落着きを取り戻しつつあるところだった。あと一瞬見下ろすのが遅かったら、それも見えなくなっていただろう。
 「さて」と私は言った。「お茶はまた少し待ってもらわなくちゃね」
 「フーッ……」とマートルは重たい、満足げなため息をついた。目は閉じられていた。
 やがて私たちはお茶を飲んだ。

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