ヘンリー・ジェイムズ『使者たち』

 とても幸せそうな二人であるというのが、知らず知らずのうちに彼が抱いていた印象であった――それは、どこか別のところから遊覧を楽しみつつ漕ぎ出してきたとおぼしきシャツ姿の若者とおっとりとした若い美人であり、土地感があるために、この人目につかぬ場所の楽しみ方をわきまえている風であった。二人が近づいてくるにつれ、さらに濃厚な空気が、二人が頻繁にこの辺りを訪れ、慣れ親しんでいること――ともかく、これが最初ではないこと――を暗示する空気が漂い始めた。どうすればよいかを二人は知っている、と彼は漠然と感じ取った――そして、そのために二人がいっそう牧歌的に見えてきたのだが、たまたまその印象を受けた瞬間、漕ぎ手が力を緩め、船が大きく逸れたかに見えた。それでもなお、すでに船はかなり近くまで来ていた――それは、船尾の方に乗っている婦人が、なぜか観察者たる自分の存在を意識していると感じ取れるほどの距離であった。婦人は彼の存在について何かはっきりとした言葉を発したようであったが、相方は振り向かなかった。実のところ、ストレザーの印象としては、婦人がじっとしているようにと頼んだかのようでもあった。彼女が何かに気づいた結果として舟が揺れ、岸から遠ざかりつつもなお揺れ続けていた。この小さな出来事はあまりに突然、あまりに急激に起こった。あまりに突然、あまりに急激であったために、それに対するストレザーの知覚は、ほんの一瞬とはいえ、彼自身の鮮烈な驚きと切り離されたものとして存在していた。その瞬間、彼もまたあることに気づいていた。輝ける景色の中にきれいな桃色の小円として浮かび上がる日傘は、まるでその持ち主の顔を隠そうとするかのような動きを見せたが、自分がその持ち主たる婦人を知っていることに彼は気づいていたのだ。これは万に一つの不思議な出来事であったが、その婦人が彼の知っている人物だとすれば、未だに背中を向けたまま遠ざかろうとしている相手の紳士の正体は、それに優るとも劣らない奇蹟であった。婦人の驚きに反応したその紳士、上着を脱いだその牧歌の主人公こそ、まさにチャドその人であった。