ヘンリー・グリーン『生きる』

 バーミンガム、ブライズリー。
 二時。何千人もが街路ぞいに食事から戻ってきた。
 「わしらに必要なのはひたすら前進押しまくることです」と工場長がデュプレ氏の息子に言った。「わしも連中に言っておるのですさあさっと仕事にかかれ早いとこ片付けちまえと」
 何千人もが食事から勤務先の工場に戻ってきた。
 「年じゅう連中をどやしつけておりますが連中もわしのことを解っておるのです。連中にとってわしが父母同然であることを皆ちゃんと弁えておるわけです。何か困ったことになったら私のところへ来さえすればよいことを知っておるのです。そして連中は実に立派な仕事をしてくれます。実に立派な仕事をしてくれます。わしが彼等の為なら何だってする気だと皆ちゃんと承知しておるのです」
 旋盤の騒音が再びこの工場で始まった。何百人もの男や娘が外の道路を通っていった。何人かはデュプレ工場に入っていった。


 何人かは鉄鋳造作業場に留まって工場内で昼食を食べた。火鉢を囲んで車座に座っていた。
 「で俺は付け鼻と緑の頰ひげ付けてパイプ作業場のドアを背に倉庫の戸口に立っておったわけだよ。アルバートのやつ中にいてげらげらげらげら腹を抱えて笑ってたんだがすると来たぞ氏がパイプ作業場から入ってきてアルバートのやつ急に笑うのをやめたんだが俺は何がどうなったんだかよくわからんでいたら『おいゲイツお前そんな馬鹿な真似しでかすしか能がないのか?』って声が聞こえた。で奴さんアルバートに言うんだよ『お前一体何が目当てでそんな所に立ってるんだマリガン?』。あんまり急なんで俺もすっかり驚いちまって鼻外すのも忘れちまってさ。こいつぁきっと一生忘れられんね」

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