F・スコット・フィッツジェラルド『夜はやさし』

 ニコルに見立ててもらって、ローズマリーは自分の金でドレスを二着、帽子を二つ、靴を四足買った。ニコルの方は、二ページにわたる長大なリストを見ながら買物を進め、それに加えて、ウィンドウに飾ってある品々も買った。自分ではとうてい使えなくても、気に入ったものがあると、誰か友人のプレゼントに買った。色つきビーズ、折りたたみ式ビーチクッション、造花、蜂蜜、客用ベッド、鞄、スカーフ、インコ、人形の家用のミニチュア、海老色の流行の生地三ヤードを彼女は買った。海水着一ダース、ゴム製のワニ、金と象牙でできた携帯用チェスセット。エイブのための大きなリンネルのハンカチ数枚、エルメス製シャミ革ジャケット二着――鮮青色(キングフィッシャー・ブルー)と蜜柑色(バーニング・ブッシュ)――彼女はそれらを、高級娼婦が下着や宝石を買うのとはまるで違う買い方で(考えてみれば娼婦にとってそれらは商売道具であり保険なのだ)、まったく異なる視点から買った。ニコルとは、多大な工夫と労働の産物であった。彼女のために汽車はシカゴから走り出し、大陸の丸い腹を横断してカリフォルニアまで達した。彼女のためにチューインガム工場は煙を出し、工場の連結ベルトは一リンクまた一リンクと長くなっていった。男たちは大桶で歯磨きペーストをかき混ぜ、銅の大樽からうがい薬を汲み出した。娘たちは八月に手早くトマトを缶詰にし、クリスマスイブには安物雑貨店(ファイブ・アンド・テンズ)で無愛想に働いた。混血のインディオはブラジルのコーヒー農園で額に汗し、夢想家たちは新型トラクターの特許権を横取りされた。これらの人々は、ニコルに十分の一税を収める人々のほんの一部にすぎなかった。システム全体がごうごうと揺れつつ前進し、大がかりな買物をはじめとする彼女のさまざまな営みに、広がる炎を前にして自分の持ち場を守りつづける消防士の顔にさす赤味のような、熱っぽい輝きを与えた。自分のなかにみずからの破滅を含有しつつ、彼女はきわめて単純な原理を体現していたが、その体現がきわめて正確であるがゆえに、その手順に優美さが備わっていたため、ほどなくローズマリーもその模倣にいそしむのだった。