デイヴィッド・ロッジ『素敵な仕事』

 さて、ヴィック・ウィルコックスをひとまずそこに残し、時間を一、二時間、空間を数マイル戻って、まったく違うキャラクターに出会うことにしよう。私にとってはいささか気まずいことに、この人物、キャラクターという概念を信じないキャラクターである。すなわち(ザット・イズ・トゥ・セイ)(というのが彼女の口ぐせなのだが)、ラミッジ大学英文科臨時講師ロビン・ペンローズに言わせれば、「キャラクター」とはブルジョワの神話、資本主義のイデオロギーを強化するために捏造された幻想なのだ。