ヘンリー・ジェイムズ『メイジーの知ったこと』

 令夫人の無沙汰は、まったく別の派手な行動によって補われないわけではなかった――彼女は威風堂々と部屋に入ってきてはそこでぴたりと静止し、天井の具合から娘の靴の先まで、まさにありとあらゆるものを管理するかのように、さまざまな思惑を込めた視察を行なった。ときおり腰を下ろしたかと思うとまた元気に動き出すのであったが、いずれの場合にもその態度には、実際に何かを成そうとする意気込みが威厳となって現われていた。彼女は次から次へと不満の種を見つけながら改善の余地ばかり増やしていき、まるで改善策と誓約をばらまいているかと思えるほど、躍起になって見積もりを立てて歩いた。彼女の訪問はまるで衣装のようなもの、その態度は、ウィックス夫人の言葉を借りれば、まるでカーテンのようなものであった。だが、彼女は極端に走りがちな人間であった――我が子に対してもほとんど口をつぐんでいたかと思うと、これもウィックス夫人の言葉によれば、大きく開いた胸元にそのか弱い芽をかき抱くこともあった。いつもひどく急いでおり、胸元の開き具合が大きいほど、外で大事な用事があることを示していた。部屋に侵入してくるときはたいがい一人であったが、サー・クロードを連れて入ってくることもあり、二人の関係が始まったころ、このような外見が楽しそうに表わしていたものは、ウィックス夫人の表現を借りれば、奥方の浮かれ具合以外の何ものでもなかった。「だって、本当に浮かれてるんじゃない!」。いかにも愉快そうな笑い声の中、サー・クロードが母親を連れ去ると、メイジーは、意味深長な、しかしお馴染みとなった表現を借りてそう叫ぶのであった。大声で笑う婦人たちが家に来ていたころでさえ、メイジーは、こうして結婚の喜びに身を委ねているときほど手放しではしゃぐ母親を見たことがなかったが、この喜びこそ母親が心ゆくまで享受すべきものであることは幼い少女の目にも明らかであり、彼女は、これから起こるであろう楽しそうなことだけを勝手に想像して幸せな気分に浸るのであった。