バルザック『ゴリオ爺さん』(平岡篤頼 訳)

要するにここには、詩情のない貧困が支配している。つつましい、凝縮した、すりきれた貧困。まだ泥にまみれてはいないが、しみだらけなのだ。穴もあいていないし、ぼろになってもいないが、いまにも腐り落ちようとしているのだ。