ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ『(朱牟田夏雄 訳)

 「ねえ、あなた」私の母が申したのです。「あなた時計をまくのをお忘れになったのじゃなくて?」――「いやはや、呆れたもんだ!」父はさけびました。さけび声はあげながらも、同時にその声をあまり大きくしないように気をつけてはいました――「天地創造の時このかた、かりにもこんな馬鹿な質問で男の腰を折った女があったろうか?」え? 何だって? 君のおやじさんは何て言ったんだって?――いえ、それだけです、ほかには別に何とも。