夢窓疎石『夢中問答』

仏法を行ずとも若し悟を開くことなくば、其の工夫いたづらなるべしと疑ふて、いまだ行じても見ずして、かねて退屈する人は愚の中の愚なり。若しさやうの疑を起さばたゞ仏法のみにあらず、世間の凡夫のしわざ何事かかねて治定(じじょう)せるや。

   *かねて はじめから。
   *退屈 仏道修行の困難さに負け、精進の気持をなくすこと。
   *治定 はっきり定まる。