アドルノ『プリズメン』(木田元 訳)

文化批判は、文化と野蛮の弁証法の最終幕に直面している。アウシュヴィッツのあとでは詩を書くことは野蛮である。しかもこのことが、なぜ今日では詩を書くことが不可能になってしまったのかを教える認識をさえ蝕んでいるのだ。精神の進歩をもおのれの一要素として前提するような絶対的物象化が、今やこの精神を完全に呑みこもうとしている。