トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシー』(岩永健吉郎・松本礼二 訳)

すべての人間の類似が進めば進むほど、誰もが全体に対して自己をますます無力と感ずる。自分が他のすべての人よりはるかに優れ、彼らから区別される点は何も見当たらないので、彼ら全体と対立するとすぐ自分の方を疑う。自分の実力を疑問視するにとどまらず、その権利にも疑惑を持つに到り、さらには大多数の人に間違っていると言われるときには、自分の誤りを認めんばかりの有様である。多数者は強制する必要がない。人を説き伏せてしまうのである。