戸坂潤『思想としての文学』(「娯楽論」)

娯楽は元来芸術性を有(も)っているのだ、そして芸術も最後まで娯楽的特色と絶縁することは出来ない。芸術の大衆性をまともに考えれば、そうあらざるを得ない。勿論娯楽はそのままで芸術にはならぬ。だが芸術への案内人であり客引きでなければならぬというのだ。だが芸術それ自身が抑々(そもそも)、生活への案内人であり客引きではなかったか。