菊池寛「文芸作品の内容的価値」

芸術のみにかくれて、人生に呼びかけない作家は、象牙の塔にかくれて、銀の笛を吹いているようなものだ。それは十九世紀ころの芸術家の風俗だが、まだそんな風なポーズを欣(よろこ)んでいる人が多い。
文芸は経国の大事、私はそんな風に考えたい。生活第一、芸術第二。