寺山修司『花嫁化鳥』

私は遺失物捜索係の前に立って、途方に暮れながら思い出すように、不確実で、遠い存在――としてのみ、「ふるさと」の風景を定義づけることができた。「ふるさと」などは、所詮は家出少年の定期入れの中の一枚の風景写真に過ぎないのさ。と、私は思った。それは、絶えず飢餓の想像力によって補完されているからこそ、充ち足りた緑色をしているのだ。