ヘミングウェイ「異郷」(高見浩 訳)

「ごめんなさい」女は言った。「イギリス人だったの、その男」
「だった?」
「イギリス人なのよ。でも、〝だった〟と言うほうが好き。それに、あなただって、どんな男だったんだ、って訊いたじゃない」
「〝だった〟というのは、いい言葉だ。〝たぶん〟よりどれだけマシかしれない」