G・K・チェスタトン「世の中で一番重い罪」(中村保男 訳)

「ひとりきりで笑える人間には二とおりあります。大ざっぱに言って、ひとり笑いする人間は非常な善人か非常な悪人です。つまり、自分の冗談を内緒で神様に打ち明けているか、でなければ悪魔に打ち明けているのですからな。どちらにしても、そんな人には内面的な生活がある。ところで、世の中には実際悪魔に自分の冗談を打ち明ける人間がいるのです。そういう人間は、安心して打ち明けられる仲間がいないときは、自分の企んだ冗談が人にわかってもらえなくても何とも思わない。冗談の趣旨が充分に陰険悪辣でありさえすれば、それだけでもう本人は満足なんです」