G・K・チェスタトン「ジョン・ブルノワの珍犯罪」(中村保男 訳)

「だいたいあいまいな思いつきというものはしごくたいせつなのです。わたしはそう思う。証拠にならないようなことがわたしには決め手になるのです。性格的に不可能だということほど大きな不可能性はないと思うのです。いや、だからと言って、ブルノワ氏がよこしまなことをやるはずがないという意味ではありませんぞ。だれだってよこしまな人間になりうる。自分の好きなだけよこしまになりうるのです。人間はそれぞれの道徳的意思を左右することはできるが、なにかをやるときの本能的な嗜好やら方法やらは、まず変えることができませぬ」

   ※太字は出典では傍点