ニーチェ『道徳の系譜』(木場深定 訳)

苦しむのを見ることは快適である。苦しませることは更に一層快適である――これは一つの冷酷な命題だ。しかも一つの古い、力強い、人間的な、余りに人間的な根本命題だ。のみならず、恐らくすでに猿すらもこの命題を是認するであろう。というのは、猿は種々の珍奇な残忍な遣り口を案出することによってすでに十分にその人間性を示しており、いわば「序曲を奏している」と言われているからだ。残忍なくして祝祭なし。人間の最も古く、かつ最も長い歴史はそう教えている――そして、刑罰にもまたあんなに多くの祝祭的なものが含まれているのだ!――

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