「インタビュー アンドレイ・タルコフスキー映画芸術について語る」(沼野充義 訳)(アネッタ・ミハイロヴナ・サンドレル 編、沼野充義 監修『タルコフスキーの世界』所収)

しかし、残念ながら、この二十世紀に支配的なのは、個人主義者である芸術家が、芸術作品の創造を目指すかわりに、それを自分自身の「私」を突出させるために利用するという傾向です。芸術作品はそれを作り出す者の「私」を表現するための手段となり、言わば、芸術家のつまらない自負を代弁するものに変わってしまう。このことについては私よりも、皆さんのほうがよくご存じでしょう。それについては、ポール・ヴァレリーが非常に多く書いています。とんでもないことですよ。本物の芸術家とは、いやそれどころか、天才とは、自分に与えられた才能の奴隷なんです。彼らはこの才能を人々から託されたのであり、人々に精神の糧を与え、人々に尽くすために、彼らは選ばれた。これこそが、私にとって自由の意味するところに他なりません。