阿部嘉昭『北野武VSビートたけし』

 蓮實「『あの夏、いちばん』の場合は自分で編集なさったわけでしょう。他人には任せられないっていうことですか」
 北野武「そうですね。要するにあの映画、日本人の能の間だと思っているから、映画を撮っているときに見てるのは自分だし、わりかし自分の心臓の鼓動を意識しながらっていうか、心臓が脈を打って、そのおかげで血が循環してたその絵を見てるわけですよね。で、撮った映画を見るときに自分がいちばん心地よいのは自分の心臓の鼓動と脈拍で見るもんだから、他人の心拍数でカットされちゃうと困るんですよね。あれはすごいわがままな映画で、自分自身がいちばん気持ちいいというフィートで編集しただけで、あの映画、全部素材渡してほかの人が編集すれば全然違う脈拍になると思いますけどね」