エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』(一條和生・杉山忠平 訳)

しかし社会が何百人ものプロレタリアを、あまりにもはやい不自然な死に、剣や弾丸による死のように強制的な死におちいらざるをえないような状態におくならば、社会が何千人もの者から必要な生活条件を奪いとり、彼らを生活できない状況におくならば、またこうした状況の結果にほかならない死が訪れるまで、社会が法という強大な腕力で彼らをこのような状況に強制的にとどまらせておくならば、またこれら何千人もの者はそうした条件の犠牲とならなければいけないことを知っており、しかも十分すぎるほど知っているにもかかわらず、それでも社会がこうした条件を存続させるならば、それは個人の行為とまさに同じように殺人である。ただし暗々裡の悪辣な殺人、だれも防止できない、殺人とは思えないような殺人というだけのことである。それというのも、殺人犯の姿が見えないからであり、全員が殺人犯でありながら、それでいてだれも殺人犯ではないからであり、いけにえの死が自然死に見えるからであり、そしてこの殺人は作為犯というよりも不作為犯だからである。しかしそれはやはり殺人である。