ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

ブリュノは正しかった。父性愛とはフィクションであり、嘘であった。それが現実を変える力を持つ限りにおいて、嘘は便利なものだと彼は思った。だが変化に失敗したとき、後にはもはや嘘と、苦々しさと、虚偽の意識しか残らない。