春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

 己の精神へ、いじましくもささやかな神秘を見いだしたいと願うのは誰しも同じであろう。しかし、だからといって狂気という言葉を曖昧なまま持ち出してそれを自身と関連づけ、その語へ憧れも不安も託してしまうという態度は情けない。
 「狂気」の多様性に注意せよ、
 蓋然性につけこんだ拡大解釈に注意せよ、
 記号化され形骸化した「狂気」に注意せよ、
 私が強調しておきたいのは、以上の三点である。