春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

狂気を無責任な立場で見る限りは、症状が派手であるほど問題は深刻に映る。しかし病気の根の深さと症状の派手さとはパラレルではない。えてして派手な症状は他者の視点を想定して「演じられる」場合があり(といって詐病とか嘘といった意識的なものではない)、それはわざわざそんな症状を「選んだ」ことに、またそんな症状を想像力のみにとどめず本当に現出させてしまうその「決断」自体に精神の歪みを求められるべきものであろう。そして他者の視点を(無意識なりに)想定出来るだけの余裕を持ち得るのならば、それはむしろ「狂気もどき」と考えるべきなのかもしれない。