2011-07-16から1日間の記事一覧

春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

己の精神へ、いじましくもささやかな神秘を見いだしたいと願うのは誰しも同じであろう。しかし、だからといって狂気という言葉を曖昧なまま持ち出してそれを自身と関連づけ、その語へ憧れも不安も託してしまうという態度は情けない。 「狂気」の多様性に注意…

春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

狂気を無責任な立場で見る限りは、症状が派手であるほど問題は深刻に映る。しかし病気の根の深さと症状の派手さとはパラレルではない。えてして派手な症状は他者の視点を想定して「演じられる」場合があり(といって詐病とか嘘といった意識的なものではない…

春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

狂気によって産出される幻覚や妄想の内容が、人々が通常考えているよりは遥かに退屈で硬直したものだという事実があるいっぽう、文学青年だとか芸術家を任じている連中が狂気へ過大な可能性や評価を「片思い」しているという事実もある。狂気は、想像力が一…

春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

私は「狂人はあまりにたやすく発見し断定する」といったフレーズをこの章で強調しておきたかったのであった。それは「天才とキチガイとは紙一重」といった俗説とも関わってくるであろう。天才は重大な発明発見を直観的に、凡人から見ればきわめて容易に成し…

春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

自我漏洩症状というストーリーが、男女関係を含む対人関係や、社会を意識し自分の存在価値や存在意義をはっきりと自覚する(あるいは自問する)ようになる思春期や青年期に好発するのはまことに象徴的である。「他人に疎まれる存在、敬遠される存在」「迫害…

春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

簡潔で暗示に富んだ形式を彼らは嬉しがっているように見える。宇宙を司るメカニズムさえもが一行の言葉に圧縮されている。そのことが大切なのである。あたかもそれは芸術における創作態度と共通しているかのように映るが、裏付けに欠けた安直な表現方法にお…