デフォー『ロビンソン・クルーソー』(平井正穂 訳)

もう今では世間を、自分とは関係のない、それについてなんら期待も欲望ももたない、ある遠い存在とみなすようになっていた。じっさい、私は世間とはまったく無縁であったし、おそらくいつまでもそうであろうと思われた。したがって、世間をみる私の見方は、われわれがこの世の生を終ってからみるそれと同じであった。いいかえるならば、かつて自分が生き、現在そこからのがれでてきたところ、としてしか世間をみていなかった、父アブラハムがダイヴィーズにむかっていった「我と汝との間に大いなる淵定めおかれたり」はそのまま私の言葉であるといってもよかった。