安岡章太郎『僕の昭和史』

大袈裟なことを言っていると思われるかもしれないが、後年、戦争のきびしくなった頃、僕らは実際に二、三箇月の生れ月の違いが生死の別れ目になるという妙な運命にあわされた。まして一年二年という年齢の違いは、平時の十年二十年に匹敵する差違を、われわれ日本人同士の間にも生むことになったのだ。