アントナン・アルトー『ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト』(多田智満子 訳)

 私は〈精神〉と〈物質〉という二元論には確かに賛成ではない。精神が何ものかになりうるためには、精神が物質化することに同意する以外にはすべのないこの世界に住む限り、すべてを精神に委ねてしまう主張と、すべてを物質に委ねてしまう主張との間には何の和解もありえないと私は言うのだ。
 物質は精神によってしか存在しないし、精神は物質の中にしか存在しない。しかし、結局のところ、主権を保持しているのは常に精神のほうである。

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