小泉文夫『日本の音』

 このジャズは、そのものが与えた影響は絶大なものがあると思います。ほとんど世界中の音楽が、何らかの意味でこのジャズの影響下にあるといっても過言ではないでしょう。即ち、二十世紀を代表する最も大きな特徴は何かといえば、実はこのアフリカ音楽だとさえいえるかもしれません。十九世紀まで、そして二十世紀初頭まで、世界の先進諸国からひたすら搾取され、そして植民地としてその不幸にあえいできたアフリカ民衆の音楽が、ほとんどなまのバイタリティのまま形をかえ、ほかの衣を着ながら、実は世界中を制覇しようとしているのです。この大きな民衆の創造性と、民衆における交流という問題は、二十世紀になってはじめて音楽文化の中に現われてきた最大の特徴といえるかもしれません。