山口昌男『文化と両義性』「岩波現代文庫版のためのまえがき」

「違和」と「異和」のちがいにもそのようないきさつがある。私が「違」と「異」とを使いわけたのは二つの間に微妙なニュアンスの「ちがい」があると思ったからである。「違」には同質のものの間の微妙なちがいがある。「内側」に属するもののちがいである。これに対し「異」という文字には内と外の間にあるような帰属のちがいのニュアンスがあると考えていた。等質のものの間の量のちがいではなく、質のちがいが決定的であるということであった。