立原正秋『帰路』

「この空と海の色はなにかしら」
「余分なものが含まれていないんだな。それに乾いている」(中略)
「余分なものが含まれていないって、どういうことですの」
「1+1は2ということさ、かんたんに言うと。しかし日本人は2の答のあとに余情を求めている。ところがここでは2いがいの答は出てこないんだな」