新藤涼子「小径」

古びた校舎のかびた匂いが
セーラー服から流れていた
小雨まじりのおさない日
女学校での長い梅雨どき
コックリさん占いの指の先
こっそり秘密を胸にかかえて
ひたいを寄せあっていた
咲く前のつぼみどき


赤い鳥居を絵に画いて
コックリさん コックリさんと
呼び合った それから
わたしたちはどこを巡り歩いた?
咲いたものを散らし散らして踏みつけて
叫んだり 泣いたり 笑ったり
ほとんど はしっこまで来てしまった
なにかを どこかでなくしたけれど
ちっとも身軽にはなれなかった